はじめに
お手持ちの腕時計を少しでも長くきれいな状態で愛用するには、定期的にケアすることをお勧めします。
日常的に手入れすることで、見た目を保持するだけでなく、トラブルの予防や劣化を遅らせることにもなります。
今回は、ご自宅でできる腕時計のセルフケアについてご紹介していきたいと思います
◇腕時計の汚れの原因
腕時計は1日着けただけでも、汗や皮脂、ホコリなどで、意外に汚れてしまいます。
汚れの原因である汗や皮脂・ホコリなどは、そのままにしておくとさびになり、リューズなど細部の操作不良や、肌に汚れが付く、かゆみ・痛みなどの症状(※1)が出ることもあります。
革ベルトでは、汚れが肌トラブルや雑菌による臭いの原因にもなります。
時計によく使用されるステンレススチールは一般的にさびにくいといわれますが、付着した水や汚れを放置しておくとさびることがあります。
もし機械内部にさびや水分が侵入すれば深刻なダメージになり、修理や部品交換に費用や期間がかかってしまいます。
重大なトラブルを避けるため、汚れを取り除き、さびの発生を防止することが重要です。
(※1)汚れが原因でない場合、金属アレルギーの可能性もありますので病院にご相談ください。
◇お手入れの際に用意するもの
お手入れに特殊な技術や工具は必要なく、ご自宅にあるもの、100円ショップや時計用品専門店、家電量販店など比較的安価で手に入るものでケアが可能です。
●用意するもの
〈全体の拭き取り用〉
▼ケア用クロス(購入時にショップからもらった時計専用クロスなど)
・マイクロファイバークロスでも可
※貴金属やメガネ、カメラレンズなどの汚れを拭くケア用品としても使われる、やわらかいクロスです。
〈細かい箇所のお手入れ〉
▼ナイロン製ブラシ(やわらかいもの)、豚毛ブラシ
・乾いた歯ブラシ(毛先が細くやわらかいもの)でも可
▼綿棒
▼爪楊枝
●あると便利なアイテム
▼セーム革
※鹿やヤギなどから採れる革。貴金属やメガネ、カメラレンズなどの汚れを拭くケア用品。
とてもやわらかく、なめらかで傷への心配も少ないです。耐水性が高いため、革には珍しく洗って繰り返し使えます。
▼ブロアー(手動ポンプ式)
※膨らんでいる部分を手で握り、先端のノズルから空気を噴射してホコリやゴミを吹き飛ばす清掃用品。カメラレンズやパソコンのキーボードの隙間を掃除するのにも使用されます。
▼革ベルト用消臭スプレー
・重曹(掃除用)でも可
※重炭酸ソーダ。白い粉末で消臭効果があり、水回りやフキンの臭い取りにも使われます。掃除用・食用(含まれている不純物の量が少ないものが食用)とあり、一般的に食用よりも掃除用の方が安価です。
〈注意点〉
・タオルは細かい繊維が落ちて、故障の原因となる可能性があるため避けた方がよいでしょう。
・クロスは水拭きを避け(水分が時計内部に侵入するおそれがあるため)、乾拭きでお手入れしましょう。
・ナイロンブラシや爪楊枝、ゴールド素材の製品には傷がついてしまうので使用を控えましょう。
◇手軽な日常ケア
日常ケアは手順を決めて行えば、数分で完了します。
毎日、着用した後にお手入れできるのがベストですが、難しい場合には1週間に1度など、定期的にケアすることをおすすめします。
それでは、パーツ別にお手入れのポイントや注意点を解説していきます。
◆時計本体のお手入れ
〔ケース&ガラス面〕
1.乾いた清潔なクロスで、全体の汚れを優しく拭き取ります。
ケースの表、側面、ガラス、裏蓋、ラグなど順番を決めてパーツごとに丁寧に拭いていくとよいでしょう。
・ガラス面は傷つけてしまわないよう、サッと拭き上げましょう。ガラスに傷がついてしまうと研磨で直すことはできず、交換になります(プラスチックガラスを除く)。
★力を込める必要はなく(指の腹で押すような感じ)でケース全体を優しく拭いていきましょう。
2.ラグの内側など、クロスが入りにくい場所には綿棒を使うと便利です。綿棒が太すぎる場合は、指で細く絞ると使いやすいです。
〔ベゼル・リューズまわり〕
1.ベゼルは境目をブラッシングして、汚れやホコリを取り除きます。
2.リューズはロックを開放して、いっぱいまで引き出した状態にして汚れ具合を確認しましょう。汚れはブラシで優しくかき出しましょう。
★この時、回転ベゼルやリューズを回してみて、回転がスムーズかチェックしておくとよいでしょう。リューズは定期的に動かすことで、汚れの固着やさびの防止になります。
◆バンドのお手入れ
〔金属ブレスレット〕
1.クロスで付着した皮脂の汚れを取り除きましょう。表側だけでなく、直接肌に触れる裏側が特に汚れやすいため、丁寧に拭き取っておきましょう。
2.コマの隙間は、最も汚れがたまりやすい箇所です。隙間に汗などの水分が残っていると、さびの発生や菌の繁殖を招くおそれがあるので、水気をよく拭いてしっかりと乾燥させましょう。
★腕時計を直に手で持つと、そこにも皮脂汚れが付いてしまうため、クロスを使って持ちながら拭き取るのがよいでしょう。
〔革ベルト〕
1.革ベルトは材質上、内部の繊維質に湿気や汚れを吸収しやすいです。表側と、肌に密着する裏側にも付着している汗や汚れを、乾いたクロスで優しく拭き取りましょう。
・着用後に毎日やることがおすすめですが、特に夏場など、汗をかいたら小まめに拭き取りましょう。
★革靴などでもいわれるように、できれば革ベルトは毎日同じものは使用せず、間隔をはさみながら使うのが長持ちの秘訣です。交換用のスペアを持っておくとよいでしょう。
2.帰宅後はクロスなどで汚れを落とした後、日陰で自然乾燥しましょう。内部に湿気を残すと臭いや痛みの原因になるので、しっかりと乾燥させることが大切です。
・軽い埃や隙間のゴミを取るには、ブロアーで風を吹き付けると一瞬でゴミが吹き飛ぶので効果的です。
◆機械式時計の注意点
機械式時計は、ゼンマイをずっと動かさないでいると内部の油が固まって劣化してしまいます。
日常で使用していない場合でも、定期的にゼンマイの巻き上げを行い、時計を動かしましょう。
また、完全に止まっている時計を動かすのは機械に大きな負荷をかけることになります。
◇念入りケア(汚れが気になる場合)
ここからは、念入りにケアしたいとき、汚れが気になる場合のお手入れ方法をご紹介していきます。
◆時計本体のお手入れ
〔ケース&ガラス面〕
1.裏蓋の凸凹や、ネジ、境目の部分などはブラシで優しく汚れをかき出します。角度を変えて丁寧にブラッシングしましょう。ガラス面にブラシをあてないよう注意が必要です。
・汚れは時間が経つと固まってしまうので、裏蓋のケアは特にこまめに行うことをおすすめします。
★細部のお手入れは、爪楊枝やブラシなど、場所により併用してケアしましょう。
(例)爪楊枝を隙間に差し込み、汚れを浮かせる→ブラシで汚れをかき出す→クロスで汚れを拭き取る→綿棒で細部の汚れを取り除く…など
2.ガラスとベゼルの境目に汚れがたまっている場合は、爪楊枝を溝に沿って優しくなぞるようにすると、汚れをかき出すことができます。
〔ベゼル・リューズまわり〕
1.ベゼル内部にゴミが入っている場合は、優しくそっと何回か回せば自然に排出されますが、それでも出てこない場合は、爪楊枝でそっとかき出してみましょう。出ない場合は無理をせず、店舗へご相談を。
2.リューズの汚れがブラシなどで落ちない場合、爪楊枝をネジ山に沿って優しくなぞらせます。爪楊枝が大きく溝に入りにくい場合は、爪楊枝を細く加工してみましょう。
◆バンドのお手入れ
〔金属ブレスレット〕
1.コマの隙間に汚れがある場合は、少しずつ角度を変えて1コマ1コマ丁寧にブラシをかけていきましょう。
2.バックル裏や、ベルトの折り返し部分などもめくり、汚れをブラシや爪楊枝で丁寧にかき出しましょう。
★ケースのお手入れと同じように、手の入りにくい細部のケアは、場所によって綿棒や爪楊枝など、道具を使い分けてみてください。
〔革ベルト〕
1.革ベルトは繊細なため、爪楊枝やブラシの使用は控えましょう。クロスで丁寧に汚れを拭き取り、肌に直に接する裏側を重点的に行いましょう。
・特に汗をかいた日には、ベルトの内側(肌に触れた部分)に固く絞った布を優しく押し当てて、汚れを布へ吸わせるようにケアしましょう。
2.臭いなどが気になる場合は、革ベルト専用の消臭スプレーなどを内側の部分に3~4回スプレーしましょう。水気に弱いため、日光の当たらない風通しのよい場所で自然乾燥させます。
・消臭スプレーが手元にない場合は、重曹でも代用できます。
(例)ビニール袋の中に、ハンカチなどで包んだ重曹(スプーン2~3杯程度)をベルトと一緒に置く→数日置く→臭いが軽減される
〈参考文献:「腕時計の教科書」株式会社学研パブリッシング(2014)〉
◇ケアの際に異変を感じたら
日常ケアの際に、精度の悪化・内部の異音・リューズの操作が重くなったというような異変を少しでも感じたら、内部トラブルの可能性もあるので、店舗へメンテナンスの相談をしましょう。
何度ブラッシングしても落ちない汚れが、さびや金属の腐食という場合もあります。
自分ではケアができない場所や、落ちにくい汚れは無理に落とそうとせず、修理のプロにお任せした方が安心です。
まとめ
定期的なお手入れで、時計の状態もチェックでき、きれいに保つことで気分よく着用できるかと思います。
ご自身で異変に気づいた場合、早めの店舗への相談や検査・修理依頼にもつながります。
時計修理の近江屋では高級時計、アンティーク時計、ヴィンテージ時計の他、掛け時計など腕時計を中心に幅広く時計修理を承っております。
高級時計の王道である「ロレックス」や「ロレックスのアンティーク時計」も数多く修理してきた実績も抱えております。
その他、カルティエ、オメガ、タグホイヤー、エルメス、IWC、ヴァシュロン・コンスタンタン、ジャガールクルト、ダンヒル、パネライ、ピアジェ、ボーム&メルシェ、ロジェ・デュブイ、ウブロ、ゼニス、グラスヒュッテ、ジャケ・ドロー、ティソ、ハミルトン、ブランパン、ブレゲ、ラドー、ロンジン、ショパール、ハリーウィンストンなど、長年培ってきた技術で、どんな古い時計でも、どんなブランドでも修理を承ります。
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