はじめに
「いつも正確な時計が突然遅れたり進んだりする」
「時刻をあわせても時間狂いが直らない」
こんな経験はありませんか?
それは磁気の影響かもしれません。
今回は、腕時計の磁気帯びについて解説していきたいと思います。
腕時計の磁気帯びとは
磁気とは相互に引き合ったり反発したりする磁石の性質のことです。
私たちの身の回りには携帯電話やパソコンなど磁気を発生する電化製品や、タブレットカバーやバッグの留め具など磁石の性質を利用した製品がたくさんあります。
これらは時計の内部に影響を及ぼす場合があります。
磁気による時計への影響
➀アナログクォーツ
アナログクォーツは針を動かすためにステップモーターという機構を使用しています。
ステップモーター内のローターという部分は永久磁石でできており、外部から強い磁気の影響を受けると正常に作動できずに時刻のずれが生じます。
※デジタル時計はモーターや歯車が使用されていないので磁気による精度の影響は受けません。ただし、方位計測機能つき製品は方位精度に影響が出る場合があります。
②機械式時計
機械式時計の精度はテンプの規則正しい往復回転運動により保たれています。
このテンプに取付けられたヒゲゼンマイが強い磁気の影響を受けて磁化されてしまうと、回転運動が不安定になり時刻のずれを生じます。
身の回りの磁気製品
●直流磁気:永久磁石や乾電池などの直流電源を用いた電磁石から発生する磁気
例/ 携帯電話・スマートフォン・ノートPC・タブレット(スピーカー部)
バッグ・財布(磁石の留め具)・健康磁気ブレスなど
●交流磁気:交流電源によって発せられ、周波数にあわせてS・N極が交互に入れ替わる磁気
例/ ACアダプター・交流式電気カミソリ・電磁調理器など
磁気を帯びた時の症状と対処法
アナログクォーツも機械式時計も外部からの強力な磁力の影響があると、時間精度の狂いや一時的な停止などが症状として現れます。その場合は磁気から遠ざけて時刻を合わせなおしてみてください。一時的な影響であれば時刻の合わせなおしで問題なくご使用いただけることがあります。
それでも精度が回復しない場合は、時計内部の部品が磁気の影響で磁気帯び(磁化)してしまっている可能性があります。その際は脱磁や内装修理が必要になります。
ご家庭では方位磁石を使って簡易的に診断することが可能です。時計を方位磁石に近づけて針が大きく振れるような場合は、時計が磁気帯びしていると判断できます。
磁気帯びしてしまった場合は?
強い磁気帯びにより精度が狂ってしまった場合は、時計から磁気の影響を抜き取らなければなりません。この作業を磁気抜きといいます。磁気抜きは「磁気抜き器」を使っておこないます。「脱磁器」や「消磁器」などともいい、専用の装置が必要になる作業です。
保管場所や収納ケースについて
腕時計を保管する際も、磁気に近づけないことが重要です。
磁気から離れた安全な置き場所を、あらかじめ決めておくとよいかもしれません。保管場所を決めておけば外出直前に探すこともなく、すぐ身に着けることができます。
そのために、時計専用の収納ケースを用意するのもよいでしょう。
収納ケースは磁気だけでなく、湿気や日光、水分やほこりなど、腕時計に悪影響を及ぼすものからも守ってくれます。
それでは収納ケースのタイプについて、3種類ご紹介します。
価格も種類も幅広くありますので、予算やお好みで選ぶことが可能です。
➀携帯用ケース
出張や旅行を含む、外出時に携帯用として使うことができるものです。また、修理依頼をする場合、配送の際にも使用できます。
価格は数百円〜と安価で購入できますので、どこでも時計を傷つけずに保管したい場合にはご検討ください。
②コレクションボックス(ウォッチボックス)
時計保管用に作られた専用ケースのことです。高級ブランドからお手頃なものまで種類やデザインも豊富です。
1本だけ収納できるものから、10本など大量に収納できるものまで、大小さまざまなサイズがあります。
ふたの部分が透明のケースは、収納した状態でお気に入りの時計をいつでも眺めることができます。
価格は数千円〜で、携帯用ケースと比べて少し高めになりますが、持っておくと役立つかもしれません。
③ワインディングマシーン(ウォッチワインダー)
ブランドによっては、機械式時計の自動巻き腕時計は着用していないとゼンマイが巻かれずに止まってしまいます。
電源を入れると時計をセットした収納部がゆっくりと回転し、自動巻き式腕時計のゼンマイを巻き上げてくれる装置がワインディングマシーンです。
価格は数千円台後半~で、高級感やデザイン性があるものも販売されています。
自動巻きの腕時計を複数本お持ちの方で、
⑴複数本のうち実際の着用頻度が少ない時計
⑵オーバーホールなど定期メンテナンスを行っている時計(定期メンテナンスをしていない場合、動き続けることで部品の消耗・劣化をさらに早めてしまうため)
などの保管に向いています。
常に着用する方にとっては必要性を感じないかもしれませんが、気になる方は用途に合うものを探されてみてはいかがでしょうか。
まとめ
現代の生活では、身の回りに多くの磁気製品があります。
着用時や保管時のほか、外出先などで腕時計をはずした際に、携帯電話やスマートフォン・タブレットと一緒にバッグの中に入れてしまうこともお気をつけください。
磁気帯びの症状や原因を知ったうえで、腕時計を磁気製品から離しておくことを日常生活の中で心がけていただければと思います。
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