高級時計の正しい保管方法|劣化を防ぐ保管のポイント

時計のメンテナンス 手入れ・保管・修理
手入れ・保管・修理時計豆知識

文:株式会社近江屋 広報部
監修:大畑 博之(株式会社近江屋代表取締役・一級時計修理技能士)

はじめに

高級時計の劣化スピードは「保管環境」で大きく変わることをご存知ですか?
高級時計をお持ちの方の中には、「久しぶりに着けたら遅れていた」という経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

機械式時計は精密機械でありながら、工芸品ともいえる存在です。
また、クォーツ時計もムーブメントは非常に繊細に作られています。

数十万円以上する大切な時計を長く愛用するためには、日々の扱いに加え正しい保管方法を知っておくことが大切です。

また、高級時計を長く愛用するためには適切な保管だけでなく、定期的なオーバーホールも大切です。
オーバーホールのタイミングや費用については、こちらのコラムでご紹介しています。

良い保管場所の条件とは?

磁気の影響を受けない場所

腕時計にとって〝磁気〟は大敵です。
スマートフォンやパソコン、スピーカーなど電子機器やマグネットの近くに置くと「磁気帯び」が起こる可能性があります。
特に機械式時計では、ヒゲゼンマイが帯磁すると進み遅れが大きくなります。
実際に修理相談でも「急に進むようになった」という症状の多くは磁気帯びが原因です。

〇保管時は電子機器から少し離すだけで予防できます。

急激な温度変化がない場所

理想的な保管温度は5℃~35℃程度の安定した室温です。
極端な高温・低温は、内部パーツの膨張収縮を招き、潤滑油の状態にも影響します。
窓辺・暖房機器の近く、車内などは避け、温度変化の少ない場所を選びましょう。

直射日光が当たらない場所

紫外線は、文字盤の退色や革ベルトの劣化を引き起こします。
特に、アンティークや限定モデルは外観状態が価値に直結するため、光対策は重要です。

〇長期保管時は「暗所+安定温度」が基本です。

落下の危険がない安定した場所

棚の端・高所・不安定な台の上は非常に危険です。
時計内部は微細な歯車で構成されているため、落下の衝撃によって芯ブレや軸折れが起こることもあります。
必ず安定した平面に置くことが基本です。

避けたい保管場所

腕時計の保管では、磁気・湿気・落下リスクのある環境は避ける必要があります。
また、キッチンや洗面所のような湿気の多い環境も内部機構に負担をかけてしまうため適していません。本棚や棚の端など、落下の危険がある場所も避けましょう。

また、意外と見落とされがちなのが乾燥し過ぎる環境です。
乾燥剤を多く入れた密閉空間では、内部の潤滑油が劣化しやすくなる可能性があります。

〇時計にとって理想なのは、湿気ゼロではなく「適度な湿度」です。

正しい保管方法の実践ポイント

ウォッチワインダー

腕時計を良好な状態で保つためには、日常のちょっとした心がけが大切です。
まず、着用後は柔らかいクロスなどで汗や皮脂を軽く拭き取りましょう。
汗を放置すると、ケースの腐食やサビの原因になります。
保管時には、ホコリ・湿気・衝撃から守れる専用のコレクションボックスを使うと安心です。

機械式時計の場合、ワインディングマシーンの使い方にも注意が必要です。
常に動かし続けると内部部品の消耗を早めることがあります。
大切な時計ほど、丁寧な保管・管理を意識したいところですね。

一方、クォーツ時計は電池が切れたまま放置しないよう注意しましょう。
電池が切れたまま長期間放置すると、液漏れが起き、最悪の場合はムーブメント交換になることもあります。
長期間保管する前は、必ず電池交換をしておくと安心です。

なお、どれほど丁寧に保管していても機械式時計内部の潤滑油は経年により劣化します。
油が乾燥・固着すると精度不良や摩耗が進行するため、定期的なオーバーホールが長持ちの鍵になります。

近江屋では状態を丁寧に確認し、最適な修理内容をご提案しております。
時計に関する困りごとがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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修理事例も掲載しておりますので、ぜひご参考ください。Achieve.(実績紹介)

こんな症状は要注意|点検をおすすめするサイン

以下のような症状が見られる場合、内部に不具合が発生している可能性があります。
・時間が遅れる、または進むようになった
・ゼンマイの持ちが悪くなった(パワーリザーブ低下)
・リューズ操作に違和感がある
・長期間使用していない
これらの状態を放置すると、部品摩耗や故障につながることがあります。
気になる症状がある場合は、早めの点検がおすすめです。

まとめ

高級時計を未来へ受け継ぐために
腕時計の正しい保管方法は、大切な時計を長く愛用するために欠かせません。
しかし、保管だけですべての劣化を防げるわけではありません。

機械式時計は3~5年に一度のオーバーホールが理想とされています。
大切な一本をこれからも安心して使い続けるために、正しい保管・定期的な点検・メンテナンスを意識していきましょう。


弊社では、高級時計を中心に、状態の難しい時計修理にも対応しております。

「動かない」「時間が遅れる」「他店で修理を断られた」といったケースでも、これまでの経験をもとに原因を丁寧に見極め、最適な修理をご提案いたします。
ロレックスやタグ・ホイヤー、IWCなど、精密な機構を持つ時計の修理実績も多数ございます。

今回ご紹介したような、保管環境による部品の故障や破損についても、可能な限り修復・調整を行い、時計本来の性能を引き出す修理を心がけています。

修理が難しいと思われる時計でも、まずはお気軽にご相談ください。

プロフィール

大畑 博之(おおはた ひろゆき)
1938年創業の時計修理会社「株式会社近江屋」代表取締役、個人向け高級時計修理ブランド「e-tokimemte(イートキメンテ)」も運営。ロレックスをはじめ高級時計の修理実績多数。一級時計修理技能士。

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